
2025年春夏パリ・ミラノファッションウィークでは、多くのブランドがブドワールスタイルを取り入れました。ステラ・マッカートニーはサステナブル素材と繊細なレースデザインを融合した知的でフェミニンなコレクションを、そしてクロエではボヘミアンスタイルとランジェリーレースを組み合わせたロマンティックなデザインでした。では、そのブドワールスタイル/ブドワールランジェリーとはなにか、詳しく解説していきます。

ブドワールスタイル(Boudoir Style)は、フランス語の「ブドワール(boudoir)」に由来し、もともとは貴婦人の私室や寝室を指す言葉です。このスタイルは、女性が自分自身の美しさや官能性を楽しむための空間やファッションを象徴しています。近年では、このプライベートな要素がファッションや写真撮影、ライフスタイルに取り入れられ、「隠す」から「見せる」へと進化しています。この記事では、ブドワールスタイルの歴史、特徴、現代ファッションへの影響、日本市場での展開について見ていきます。
ブドワールスタイルの歴史的背景
起源と文化的意義
「ブドワール」という言葉はフランス語で「貴婦人の私室」を意味し、18世紀から19世紀にかけて上流階級の女性が自分だけの時間を過ごすための空間として使用されていました。この空間は、読書や刺繍など趣味を楽しむだけでなく、自分らしさや官能性を自由に表現する場でもありました。
20世紀初頭には、この私室の雰囲気がアートやファッションに取り入れられるようになり、特にアール・ヌーヴォーやアール・デコといった芸術運動がブドワールスタイルに影響を与えました。これらの運動は女性の自然な美しさやエレガンスを強調し、繊細なレースやシルク素材が多用されるようになりました。
第二次世界大戦とピンナップ文化
1940年代にはピンナップモデルが登場し、ブドワールスタイルはさらに広まります。ピンナップ写真は兵士たちの士気を高めるために使われた一方で、女性らしい魅力や自信を表現する手段としても注目されました。この時期からブドワールスタイルは単なるプライベートなものではなく、大衆文化にも影響を与える存在となりました。
ブドワールスタイルの特徴
素材とデザイン
ブドワールスタイルは、その素材選びとデザインにおいて独特です。以下が主な特徴です。
- 繊細な素材:レース、シルク、シフォンなど肌触りが良く、高級感のある素材が使用されます
- センシュアルなデザイン:身体のラインを美しく引き立てるスリップドレスやコルセット風トップスなどが代表的です
- 柔らかな色調:ブラック、アイボリー、ダスティピンクなど落ち着いた色合いが多く用いられます
見せるファッションとしての日常化
2020年代以降、「インナーウェアをアウターウェアとして着こなす」というトレンドが広まりました。具体的には以下のようなアイテムが人気です。
- スリップドレス
- レースブラレット
- シルクガウン
- コルセットトップス
これらは単なる下着ではなく、日常的なファッションとして街中でも堂々と着用されるようになっています。
現代ファッションへの影響

ランウェイでの採用
2025年春夏パリ・ミラノファッションウィークでは、多くのブランドがブドワールスタイルを取り入れました。以下はその一例です。
ブランド | 特徴 |
---|---|
ステラ・マッカートニー | サステナブル素材と繊細なレースデザインを融合した知的でフェミニンなコレクション |
クロエ | ボヘミアンスタイルとランジェリーレースを組み合わせたロマンティックなデザイン |
グッチ | 深紅色のランジェリー風アイテムで大胆かつ洗練された印象を演出 |
フェンディ | ビジューやビーズを施したオーガンザ素材のスリップドレスで軽やかな印象を演出 |
サンローラン | レース素材でセンシュアルさを強調し、シュミーズなどインナーウェアをあえて見せるデザイン |
バレンシアガ | ブラジャーと一体化したボディタイツなど革新的なアンダーウェアデザイン |
これらのブランドは、それぞれ独自の視点からブドワールスタイルを解釈し、新たなエレガンスとして提案しています。
ブドワールフォトグラフィーという新ジャンル

さらに、「ブドワールフォトグラフィー(Boudoir Photography)」という写真撮影ジャンルも注目されています。これは女性自身が自分らしい美しさや官能性を記念写真として残すもので、自尊心や自己肯定感向上にも役立つと言われています。日本でも専門スタジオやサービス提供者が増加している状況で、特に以下のようなテーマが人気です。
- 自己肯定感向上
- 特別な記念日の撮影(結婚前撮り、妊娠記念など)
- ファッションフォト風の演出
日本市場での展開

国内ブランドによる取り組み
日本市場でもブドワールスタイルは急速に浸透しています。以下は代表的な国内ブランドです。
- ピーチジョン:若年層向けに手頃な価格帯でセクシーかつ可愛いデザインを展開
- ラヴィジュール:大人っぽいセンシュアルなデザインで20~30代女性に人気
- サルート(ワコール):高級感ある素材と洗練されたデザインで幅広い層から支持
日本独自のアプローチ
日本では、「かわいい」と「上品さ」を融合した独自のブドワールスタイルが好まれる傾向があります。また、日本人特有の体型や肌色に合わせたデザインも多く見られます。
コスプレランジェリー
また、コスプレランジェリーで見るようにアニメキャラと官能性を両立させたデザインが近年好まれる傾向があります。コスプレランジェリーについては別の記事にて詳しく解説しています。
今後の展望
多様性とサステナビリティ
今後もブドワールスタイルは進化していくことが予想されます。特に次の2つが注目されています。
- 多様性:あらゆる体型・年齢・性別に対応するデザイン
- サステナビリティ:環境負荷を軽減する素材や製造プロセス
自己表現としての重要性
また、このスタイルは単なるファッションではなく、自分自身への愛情や自己表現としても重要視されています。「隠す」から「見せる」への変化は、多様化する現代社会において女性たちが自信を持って自己表現する手段として定着していくでしょう。
まとめ
ブドワールスタイルとは、プライベート空間で楽しむ官能性や繊細さを日常生活へと昇華させた新しいファッション文化です。その歴史的背景から現代ファッションへの影響、日本市場での展開まで、多角的に進化しています。2025年以降、このトレンドはさらに一般化し、多様性尊重やサステナビリティ志向とも結びつきながら成長していくことが期待されます。